腕にはめているとすごく進む。他店に修理を依頼したが症状は治らなく当店にお持ち込み。
精査しました。ゼンマイがいっぱいになると異常に進むのは振り当たりという現象。このためメーカーへゼンマイの交換または調整を依頼しました。
腕時計解体新書
Maurice Lacroix
モーリスラクロア自動巻きの分解修理
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(2)メーカーより見積もり。こじ開けの傷のためケースの交換が必要とのこと。見積額も非常に高く出ました。このためお客様が当店にて修理ができないかを打診。当店で再度ケースの調査をしました。確かにわずかではありますがこじ開けた跡が残っていました。このガラス側の枠を外すには特殊な工具が必要です。
それでは特殊なこの工具を作ってみましょう。昔は時計屋さんの修理道具などは手作りのものが多くありました。


(3)このガラス枠を外すには枠全体を囲んでしっかりと固定するアルミの枠を旋盤を使って作る必要があります。
それでは特殊なこの工具を旋盤を使って作ってみましょう。(左)
ぴったりとサイズが合ったものを作りました。この枠を時計保持台を使って絞り込むように固定します。いざ回転。
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こじ開けの傷のため回転させるのが少し重かったようですが、ガラス枠を傷めないで回し外すことができました。傷跡(赤丸印部分)などはきれいに取り除くことができます。
メーカーが言うようなケース全体の交換は必要なかったようですね。
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裏フタはネジ4本による留め方です。ムーブメントもきれいですね。自動巻きの巻き上げは異常なし。
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ケースを分解精査したところ外部にはほとんど傷もなくお客様はこの時計を丁寧に扱ってみえるようです。
ゼンマイのいっぱいの時の振り当たりという現象はSEIKOでも昔のハイビートのグランドセイコーにもよく発生しましたね。
グランドセイコーのゼンマイトルク調整はこちら
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文字盤側を分解していきます。ジャンピングデイトの機構になっているためカムやスプリンが複雑にかみ合っています。仕組みはどのメーカーも同じような組み合わせです。日曜日から月曜日までをジャンプして針を送るため月曜日の0時に歯車(赤い丸印)についたカムとレバーで曜日の歯車を7日分ジャンプさせます。
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動力の残存メーターになる、パワーリザーブ機構の歯車もやはり複雑にかみ合っています。ここでは遊星歯車という特殊な歯車が使われてます。
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歯車の中に小さな歯車が動き回るようになっている遊星車が入っている仕組み誰がこのような歯車の仕組みを考えたのでしょうかね?昔の設計者はえらいね!(8)の拡大
同じような歯車の仕組みはゼニスの修理にもあります。参考ゼニス修理はこちら
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ゼンマイがいっぱいいなると一定にところでスリップする歯車です。
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文字盤裏側の複雑な機構をすべて取り外しました。
こうして見れば普通の時計と同じようですね。
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さていよいよ時計の自動巻き部分の分解に入ります。
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シンプルな自動巻きの構造です。故障率は非常に少ないように思われます。
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シゼンマイを外して確認するためにはすべて分解しなくてはなりません。
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ギアトレインの状態。歯車は非常にきれいですね。
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ゼンマイ部分の検査です。香箱芯をチャックで挟んでトルクを検査します。巻き上げる指先に神経を集めます。
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ゼンマイをいっぱいまで巻き上げると重くなり過ぎてしまいます。
振り当たりしてしまうトルクです。
ゼンマイを取り出して香箱のふちとゼンマイの先についているトルク調整板を内側にまげてもう少し軽めに巻き上げられるように調整します。
ゼンマイについてはこちら
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参考修理料金
修理料金の内訳 2018/09/30現在
分解調整基本料金(外国製・クラスB・機械式) ¥37,000
ケース修正仕上げ ¥20,000
ゼンマイ調整 ¥5,000
以上 合計 ¥62,000(税込み)
詳しくは修理料金表をご覧ください。(別画面で開きます。)
このほか多数の腕時計修理具体例を掲載しています。