腕時計の電池交換は簡単なようで非常にデリケートなものです。また、時計の種類により色々な種類の電池があります。慣れない手つきで裏蓋の開閉を行うと、外装に傷をつける可能性があります。大切な時計の電池交換はプロにお任せください。
電池交換の重要性
交換手順 Replacement procedure
STEP1
時計に付着した汚れや錆(サビ)を掃除棒(やわらかい柳の木)や刷毛(ハケ)などでキレイに落とします。ふたとケースの隙間は特に念入りに汚れを落とします。以前に電池交換をした時に付いた目立つ傷などはこの時点でお客様に確認していただきます。
STEP2
ケ-スオープナーにはビニールなどをかぶせケースに傷跡を残さないようにこじ開けます。こじ開け式以外にもスクリューバック方式やネジ留め式などいろいろな裏フタの開け方があります。
STEP3
ご覧のように開け口にはムーブメントの電気回路やコイルがあります。構造を知らない人がむやみにこじ開けると、コイルや回路を傷めてしまいます。傷が付いたり回路が壊れる前にまずは、技能士のイトウにお任せください。
STEP4
電池交換後(動作確認後)にはふたの内側の掃除をし、パッキン(ガスケット)をクリーニングします。交換が必要なものはこの時点でお客様に確認後、交換します。
STEP5
シリコングリス(防水用)を塗布してからふたを閉めます。
電池交換例 カルティエ
ケース外周にはキズが多数付いています。(他店交換お断りのお持込品です。)
裏側には細かいキズが多数。ふたの止めねじの溝が二本ほどだれています。(ねじがサビ付き開かなかったのかも)
裏側はサビがひどく発生して磨き上げるのに相当時間がかかりました。
サビのためにがでこぼこになった溝も磨き修正してパッキン交換をしました。
ケース内側はやはりサビのため凹みができてしまい、防水効果はあまり期待できません。(納得していただきました)
押さえ板を慎重に基盤(ムーブ内部)から取り外します。
押さえ板を内部から取り出します。
電池を取り出します。
一ケ所を一度に締め付けないで、たすき状に仮閉めします。ずれや異常がないか確認後全体を締め上げます。
傷の付いたねじの頭を修正してから磨きあげています。(修正不能の場合は別作します)
この時計はオーバーホールが必要とお伝えしましたが、とりあえず旅行中動けばよいということで、 電池交換をいたしましたが、1ケ月後に動いている状態でお客様オーバーホール依頼。 内側外側とも再度キレイに磨き上げてお渡して喜んでいただいたのは言うまでもありません。
また、電池の中には画像のように白く粉がふいてしまったり、液が漏れているものがあります。(※この時計に使われた電池ではありません)長期間止まったまま置いておくと左側のように膨らんで押さえを傷めるものもあります。交換はお早めに!
時計に使用される電池とは?
〇小体積であること。
〇長い寿命が要求されます。
〇高精度の持続(一定の電圧を供給できること)。
〇厳しい使用環境に対応すること。
〇電圧の安定した電圧が長期間供給できること。
〇外部温度に左右されないこと。
〇漏液しないこと。
〇長期間の保存に耐えること。
〇環境にやさしいこと(水銀電池は現在製造中止になりました)。
〇銀電池では微量の水銀が使われていましたが近年使用率0%になる予定です。
以上の特性を備えたものが酸化銀電池の2タイプ(下図参照)とリチウム電池です。
イトウでは製造年月の半年以上過ぎたものは使用いたしません。少しでも新しい電池を入れるように心がけております。また、交換した古い電池は回収リサイクル専門業者に委託しています。
電池の内部構造
電解液には水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの2種類があり、アナログクオーツには水酸化ナトリウム、アラームやランプを使用するクオーツには水酸化カリウムを使用した電池を使います。リチウム電池にも同じように有機電解質の電解液が使われています。電池内部は極材(酸化銀・亜鉛・マンガン・リチウムなど)のほかに電解液が使用されています。漏液しないように製造されていますが、長期間放置しているとガスケットなどが痛んで液漏れが生じます。非常に強いアルカリ性の液のため、接点や回路の電池受けなどを痛めてしまいます。時計が停止した場合できる限り早めに交換をしてください。
最近はエコドライブ腕時計などに使用されている、ソーラー(光発電)で作動する時計が増えてきました。充電池については下記の種類があります。
〇MT系(1.5V) 通常のソーラー式の腕時計に使用されます。
〇CTL系(2.5V) たくさんの電気を使用する電波時計に使用されます。