オーバーホール・時間が合わない。複雑なメカニズムが特徴であるクロノグラフとビッグデイト。ブライトリングらしさがあふれているr自動巻きクロノグラフの腕時計です。分解洗浄から組み立て完成品までを掲載しています。
分解・修理の様子 Disassembly/repair
STEP1
複雑な構造の腕時計
STEP2
時計の状態
裏側には相当数の傷がついています。専用のオープナーを使って蓋を開きます。リュウズが途中で歯車を使用してジョイントされた複雑な仕組みになっています。このため修理には普通のリュウズが付いた代用の巻き芯を用意しました。
STEP3
ケースとムーブメントを同時に設計製作することの重要性
ケースとムーブメントの巻き芯のセンター合わせ(高さ調整)のために後付けされたものと思われます。もとはETAのムーブメントにブライトリングの分厚いケースに合わせるために設けられたもののようです。ケースとムーブメントを同時に設計製作しておればこのような複雑な仕組みは必要がなくなりますね。
STEP4
原因と症状
ビッグデイトの仕組みがちょっと解りづらくなっています。31日から01日になるように歯車の爪がかみ合うようになっています。このため31日前後で左側のカレンダー板が時々半送りになる症状が多く発生するようです。
STEP5
日付板を外す
カレンダー歯車のかみ合わせや位置を確認して日付板左右を外します。小さな抑えリングで止めてあるため慎重にはずして行きます。
STEP6
カレンダー板の取り付けや洗浄
カレンダー送りの爪が4個使用されてそれぞれ違った役目を持っています。ねじで止められている一番左の歯車がフリー状態になるところがあるため左側のカレンダー板の取り付けや洗浄には気を使います。
STEP7
本体の分離
クロノグラフの部分と主機能と自動巻き部分を3か所のねじを外して分離します。(画像上半分)私は2階建てクロノグラフといつも言っています。オメガやロンジンなどにも使われているムーブメントです。自動巻き時計にクロノグラフと日付のメカ部分を乗っけたものです。このため時計部の普通は日付板(上右の画像)に歯車を作って小さな伝え歯車(左下画像)に日付送りの力を伝えています。(複雑です。)
STEP8
磁気の干渉
クロノグラフの部品を見るとお互いに引っ付くようです。磁気が入ってこのようになります。磁気は時間を狂わせるだけでなく部品に鉄粉が集まってしまうためあまりよくない結果になってしまいます。磁石関係(モーターや携帯のバイブやスピーカーの近く)には時計を近づけないようにしてください。
STEP9
筒カナ車の掃除
クロノグラフやカレンダーには異常はありませんでした。さていよいよ時計の不調箇所の調べをして行きます。長針を回転させる筒カナ車の穴の中が黒く汚れていました。掃除棒できれいに磨きます。
STEP10
芯の洗浄
上記の歯車が入る芯の部分(矢印部分)はやはり黒く汚れているため刷毛を使ってきれいに洗浄します。
STEP11
歯車の洗浄
洗いバチの中に入れた洗浄液内で黒い部分を洗い刷毛を使ってきれいになるまで落とします。ほかの歯車なども基本手洗いになります。
STEP12
クリーニングと注油
地板側の天芯の穴石と受け石も外してから、きれいにクリーニング及び注油。
STEP13
自動巻き部分の掃除
自動巻き部分もきれいにクリーニングしてあります。注油組み立てをします。
STEP14
香箱、2番車の組み立て
ゼンマイの組み込まれた香箱、2番車から順番に組み立てます。
STEP15
輪冽(ギアトレイン)の組み込み
輪冽(ギアトレイン)を順に組み立てテンプのヒゲゼンマイに偏りがないか確認してから組みこみます。
STEP16
石穴石の組み込み
テンプを組み込んで天心が穴の内部でゆらゆらと動いていればヒゲゼンマイの偏りはありません。(画像上部)この動きを見てから受け石穴石を組み込みます。受け石穴石の注油のノウハウは時計解体新書の時計修理技術に掲載しています。
STEP17
歩度の調整
時計部分の組み立ては完了して歩度もおおよその精度まで。調整しておきます。ガラス製のふせ瓶でほこりがかからないようにして次は自動巻き部を組み立てて行きます。
STEP18
自動巻き部の組み立て
自動巻き部分の歯車を組み込みローターを3本のねじでしっかりと固定します。
STEP19
ゼンマイの確認
自動巻き部分を先ほどの時計部分に組み込みます。軽くローターが回るか、手巻きでゼンマイが軽く巻くことができるか確認します。
STEP20
カレンダー動作の確認
日付を送るための歯車を組み込み、カレンダーの送り具合なども確認しておきます。
STEP21
クロノグラフ部分の組み立て
2階建てのクロノグラフ部分の組み立てです。時計部の秒車(4番車)からの力で大きな歯車を回します。この大きな全歯車のどこかに少しでも抵抗があればクロノグラフを動かした時には止まってしまいます。
STEP22
レバーの組み立て
クロノグラフの秒計測針・分計測針・時間計測針の各針をリセット(0位置)するためのレバーを、かみ合わせに注意しながら組み立てます。
STEP23
各針の位置の確認
カレンダー部分の動きを確認して針の取り付けです。まずは右側秒針を取り付け、12時位置でカレンダーが変わるように長短針をセットします。次にプッシュボタンを押してリセットさせたときにクロノグラフの各針が0位置に来るように取り付けます。何度もリセットをかけて各針の位置を確認します。
STEP24
完成
洗浄後傷を消して磨きをかけたケースにムーブメントを入れます。歩度を調整して完成です。ふーうっ。完成まで息が抜けませんね。
参考修理料金 2017/09/01現在
分解調整基本料金(外国製・クラスB・機械式) | ¥55,000 |
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合計金額 | ¥55,000 |