Grand Seiko (グランドセイコー)　9S66A グランドセイコーCal:9S66A｜分解具体例

オーマイガー！　文字盤が回ってしまう。強いショックや何度も衝撃を与えているとこのように文字盤の足が折れてくるりと回ったりずれてしまいます。ひどいときには針を取り付ける歯車なども壊れてしまう場合があります。衝撃は禁物です。

針外し、文字盤の裏側と取り残された文字盤の足の部分です。（赤い丸印部分）

今までと同じ太さの銅線を垂直に立ててハンダで溶接。文字盤の表側が熱で変色しないようにぎりぎりの温度で溶接をします。昔からの溶接方法ですがしっかりと文字盤が再利用できます。新品に交換するよりはお値打ちかと思います。

文字盤を取り付け、足の長さを確認します。自動巻きのローターが接触しない長さで切断します。

さて文字盤の足を元々とりついていた場所に溶接してあるため、針を取り付ける歯車と文字盤の中央の穴のセンターがほとんど狂っていません。うまくいきましたね。

カレンダーの状態を見ます。文字盤の外れにより中央の歯車の芯が傾いていないかも確認します。今回は傾いていないようです。

針が付く歯車（筒カナ車）が黒く汚れていました。文字盤のずれのため抵抗が大きくこのように黒くなってしまったようです。

カレンダーや24時間針を回すために上画像のようにいろいろな形の歯車が使われています。リュウズからの力を切り替えたりする伝え車とセットになっているレバーです。前々から感じていますが、あまり複雑な構造にすればするほど故障率がアップするようです。できる限りシンプルな構造を考えなければだめではないかと思います。

さていよいよ自動巻き部の分解精査に入ります。おーい元気か？

この9S66系はマジックレバー方式ではなく2枚歯（2段式）の切り替え車を使った自動巻き方式です。自動巻きの方式はどれが良いかと聞かれますが、それぞれ良い面悪い面があります。（時計の設計者の考え方があります）要は大切に使えば長くきれいな状態で使えます。取り扱いには十分ご注意を。

ゼンマイをまく角穴車や自動巻きの伝え車を取り出し調べました。異常なところはなく洗浄だけでOKのようです。

この時計の輪列（ギアトレイン）構造です。ガンギ車に特徴的な形が見られます。これは歯車の重量をできる限り軽くして回転速度に影響が無いようにするためのものと思われます。

手巻きでゼンマイを巻き上げるためのユニット部分（伝え車・切り替え車）です。

長針がとりつく細い芯の部分（パイプ状1ｍｍよりも細い芯です。）中央には秒針がつく芯（4番車）が通る穴が見えます。文字盤のずれによりこのパイプが曲がったり折れたりもします。衝撃には注意が必要です。不良個所はすべて修正洗浄組み立て。ケースやベルトもきれいにして返却させていただきました。修理内容を掲載させていただきありがとうございました。