ゼンマイ式掛け時計でよく売れた時計です。完全不動のオーバーホールの依頼。分解調整を長期間しなくて動くだけ動かしてきたそうです。愛着があり、どうしても動くようにして欲しいとのご要望にお答えしましたが・・・・外側ケースはお客様の都合により掲載は控えさせていただきました。
分解・修理の様子 Disassembly/repair
STEP1
完全不動のオーバーホールの依頼
STEP2
時報装置の数取り車の様子
時報装置の数取り車の様子、時報側の動きはそこそこに。
STEP3
ガンギ車の検査
ガンギ車までの力が伝わってきません。なぜでしょうか?検査を進めます。
STEP4
ゼンマイの洗浄拭き取り
ゼンマイの表面にはサビも発生していました洗浄拭き取りにて落とします。分解前にゼンマイの力を解放するためにゼンマイを針金などで軽く縛ります。コハゼばねをはずします。
STEP5
ゼンマイの力を解放
コハゼを浮かしてゼンマイの力を解放します。結構握力が必要です。針金は一番車とほぼ同じ大きさ(やや大きめ)で縛り付けてあります香箱の役目をしてくれます。初めて分解する人は危険ですから真似をしないで下さい。作業の状況を一度見てからにしてください。
STEP6
輪列(ギアトレイン)の調子を検査
輪列(ギアトレイン)の調子を検査します。歯車の回転が重く各所の油が固まっています。
STEP7
油切れの状態を確認
ホゾ穴からは真ちゅうの地板の磨耗粉がにじみ出ています。完全に油切れの状態で動かしていたものと思われます。
STEP8
ホゾ穴の状態確認
全体のホゾ穴も同じ状態です。
STEP9
二番車の磨耗状況の確認
一番力の加わる二番車の磨耗状況です。分解調整をしないでこのまま潤滑油を塗っても動力がうまく伝わりません必ず完全に分解して各部品の磨耗状態を正常に戻してから組み立て直さないと気持ちよく動くものではありません。
STEP10
拡大画像
拡大してみると減っているのが良く解ると思います。
STEP11
全ての部品を分解洗浄
力が加わる部分が減って真円が楕円に変化しています。全ての部品を(ホゾ穴もきれいに修正して)分解洗浄します。
STEP12
丸く仕上げ磨き
減っている方をタガネでたたいて寄せます。何度か修理をしてきた時計で寄せ切れない場合は真ちゅうを埋め込んで溶接する場合もあります。えぐり棒で丸く仕上げ磨きをかけます。
STEP13
全ホゾ穴を検査修正
全ホゾ穴を検査修正します。全て調べて調整するのには結構時間がかかるものです。穴の数を計算してみてください。上下あわせて26箇所以上です。
STEP14
輪列(ギアトレイン)の分解
輪列(ギアトレイン)を分解します。ゼンマイは腕時計のように香箱が無いため太目の針金で縛り付けてあります。とりあえずこの状態で分解します。
STEP15
かなと造りの状態の確認
腕時計のかなと造りが違いますね。縦の格子のようになっています。どれか一本でも折れていたら、差し替えます。各歯車のカナは損傷無く、洗浄のみで済みました。
STEP16
歯車の確認
時報側の特徴ある形をした歯車です。ゼンマイの力の強弱による回転速度の違いを、空気抵抗で回転を抑制して時報を打つ速度を一定にする役目をしています。風車です。セイコークオーツの腕時計でスイープセコンド式の5S21Aが流体式ビスカスレギュレーター(秒針の動きを一定速度で動かす)の作動方式が液体か気体の違いかと思われます。
STEP17
ゼンマイの仕上げ
動力源のゼンマイをすべて伸ばして、布できれいに磨き上げます。古い油を拭き取ることでゼンマイ同士のすべりを良くします。この肯定を省いて修理をされるお店が時々見受けられますが、私は面倒でもこの作業は省くことはいたしません。
STEP18
修理完了
ホゾ穴もきれいに掃除棒で磨いて組み立て注油作業に入ります。組み立て完成後時間の誤差を2日から3日かけて調整します。気持ちの良い音(チックタック)を響かせ快適に動きました。もちろん、お客様は喜んでお持ち帰りになられました。今でも調子よく動いているそうです。
参考修理料金 2007/09/01現在
旧式ゼンマイ式クロック分解調整最低基本料金 | ¥18,000 |
---|---|
合計金額 | ¥18,000(税込み) |