ムーブキャリバー3135を使用したシードウエラーオーバーホール点検。針回し不具合修理の依頼でした。ケースから慎重にムーブメントを取り出します。もちろん専用工具で蓋を開けます。ゼンマイを巻き上げる時に抵抗感がなくゼンマイも切れているようです。
分解・修理の様子 Disassembly/repair
STEP1
オーバーホール点検、修理依頼
STEP2
針を外す
秒、長、短針と針をはずします。裏側(文字盤下)輪列の動きを確認カレンダーには異常はありません。
STEP3
全体の状態の確認
まず、全体の状態を見ます。針を回すときの違和感は画像の歯車の芯が磨耗していたためでした。目視で確かめて初めて解るものです。そのほかに指先で感じる抵抗感。ゼンマイの巻上げの感触やネジを緩めるときや締める時の圧力感も今までの経験則から解ります。この部分の修理は全部分解してからにします。
STEP4
ゼンマイの巻上げ状態の確認
自動巻きゼンマイの巻上げ状態を調べます。自動巻き部の部品を点検します。巻き上げ状態は異常なしでした。ローターの芯の磨耗などを検査します。
STEP5
自動巻きユニットの裏側の画像
自動巻きユニットを裏側から見たところです。
STEP6
テンプの分解
テンプなどから分解してゆきます。輪列(ギアトレイン)には異常は見受けられませんでした。ゼンマイを巻き上げるときに、まったく抵抗感が無くスカスカの状態だったので手巻きユニットを総点検します。輪列(ギアトレイン)はcal_3100と同じですので省きます。
STEP7
手動巻上げ部の点検
手動巻上げ部分(キチ・ツツミ車)の点検です。あまり磨耗もしていません。キチ車から伝え車裏側の部分です。ここも異常はありませんでした。
STEP8
ゼンマイの部分(香箱)の分解
ゼンマイの部分(香箱)を分解します。やはりゼンマイが切れていました。この機種はよくゼンマイ切れがあります。洗浄後自動巻きゼンマイ用の専用グリスを塗布して新しいゼンマイを挿入します。ゼンマイは結構長くて弾性の強い金属で出来ています。いつ切れるかは解りません。修理完成後半年で切れてしまう場合もありますし、10年以上持つものもあります。
STEP9
ぜんまいの取り出し
切れたぜんまいを取り出したところです。こんなに長いものが香箱の中に納まっているのです。36時間以上動くわけが解っていただけると思います。
STEP10
芯の修理
さて上の減っていた芯の修理です。今までの部分を削って取り除き穴を開けてからポンス台で新しいピンを打ち込みます。正規にはこのベース全体の交換になると思いますが、非常に高価な部品であり、修理料金も高くつくためこのような修理を施します。昔の職人はこのような修理を数多く行ってきました。
STEP11
針回しの回転状態を検査
新しい太さを合わせたピンを裏側(上の画像)から打ち込み、高さも合わせます。歯車をセットして針回しの回転状態を検査します。正常に回りました。うまくできました。中心を出すのに細心の注意と神経を使います。
STEP12
洗浄組み立て、時間調整、防水検査
押さえ板をセットしてすべてスムースに動かせることを確認します。異常個所をすべて修理してから、洗浄組み立て、時間調整を行います。ケースに収める前に防水検査をします。
STEP13
ピンの状態の画像
撮影できませんでしたので。図で説明しておきます。右が正常なピン。左が磨耗したピンの状態。上の歯車が食い込んでしまい、針を回すときにキシミ感などの違和感がありました。定期点検を怠るとこのように油切れによる心棒の損傷が発生します。修理料金も高くついてしまいます。自動巻き腕時計の定期点検は4・5年に一度です。
参考修理料金 2007/09/01現在
分解調整基本料金(外国製・自動巻き・クラスB) | ¥35,000 |
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ゼンマイ・芯修理など追加料金 | ¥10,000 |
合計金額 | ¥45,000(税込み) |