ムーブキャリバーETA2824 自動巻きを使用した時計です。ETA社の非常に調子のよいムーブです。色々な時計メーカーに採用されています。不動状態でのオーバーホール点検の依頼でした。表面から見た限りでは不動の原因がわかりませんでした。分解検査の段階で判明するものと思われます。
分解・修理の様子 Disassembly/repair
STEP1
不動状態でのオーバーホール点検の依頼
STEP2
仕様の確認
裏側六本のネジでふたを押さえる式です。他の時計でもこのネジの頭にキズが付いて持ち込まれるものが時々あります。決して簡単ではありません。技能士にお任せください。当店では傷の付けられたネジなどは再生修理して元の状態に戻すことができます。困ったを良かったにします。
STEP3
全体の状態の確認
まず、全体の状態を見ます。自動巻き部分の動きや歯車の状態を調べます。自分の目でよく確かめることが大切です。そのほかに指先で感じる抵抗感。ゼンマイの巻上げの感触やネジを緩めるときや締める時の圧力感です。
STEP4
秒、長、短針と針を外す
秒、長、短針と針をはずします。裏側(文字盤下)輪列の動きを確認しましたが、ここは異常はありません。
STEP5
カレンダーユニットの分解
カレンダーユニットをそっと分解しましたが、不動の原因はカレンダー部分ではないようです。
STEP6
ローターを分解
ローターをそーっとはずします。不動の原因を調べる場合は、静かに分解が基本。
STEP7
自動巻きユニットを取り出し
自動巻きユニットを取り出します。まだ不動状態です。テンプのみは振ってやるとくるくる回ります。ガンギ車やアンクルまで動力が伝わっていません。
STEP8
テンプの分解
まだ不動状態です。テンプをはずします。
STEP9
輪列(ギアトレイン)の状態を検査
ゼンマイ動力を開放して輪列(ギアトレイン)の状態を検査。洗浄前に出来る限り見落としをしないようにします。
STEP10
アンクルの分解
アンクルをはずして輪列(ギアトレイン)のみにします。ゼンマイを軽く巻いてみましたが、動きがぎこちなく何かしらおかしな動きです。
STEP11
受け石の高さ調整
ガンギ車=OK・四番車=OK・三番車=??と順番にあがきやかみあわせを調べてきたら、三番車にまったくアガキが見られません。これでは自動巻きユニットを組み付けたら不動になってしまうのは当然です。昔ながらの受け石の高さ調整です。
STEP12
アガキの調整
アガキをつくるため適正量押さえ側に受け石を押し込みます。ミクロン単位で、水平垂直基準がしっかりしたポンス台を使用します。(40年以上も使っています。)石を押し込む高級な専用の台もありますが、昔からこの台で十分仕事をこなしてきました。もちろんこのポンス台やタガネセットも当時としては非常に高かったですヨ。
STEP13
アガキが適正か確認
三番車だけをはめ込み、上下のあがきが適正になったら、エアなど吹き付けて軽く回転することを確認します。製造段階ではゼンマイがいっぱいで正確に動いてしまうため、出荷されてしまったようです。アガキが無いため、油が粘った段階で不動状態になってしまったようです。
STEP14
輪列(ギアトレイン)の回転状態の確認
輪列(ギアトレイン)の回転状態は良好になりました。軽い力で軽快に回ります。洗浄・組み立て・時間調整・ケーシングへと進みます。日差プラスマイナス10秒以内に調整をしてお渡ししました。
参考修理料金 2007/09/01現在
現在分解調整基本料金(外国製・クラスB)
自動巻き、革ベルトの場合、基本技術料金の90% |
¥35,000 |
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合計金額 | ¥31,500(税込み) |